執筆者
となり眼科 院長
院長 戸成 匡宏
経歴
- 2003年3月
近畿大学医学部卒業 - 2003年5月
大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)眼科入局 - 2006年4月
南大阪病院 - 2009年4月
大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)大学院入学 - 2013年3月
大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)大学院卒業 - 2013年4月
大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)助教 - 2020年7月
大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)講師 - 2023年5月
となり眼科 開院
糖尿病網膜症は、かなり進行するまで自覚症状が出にくい病気です。「見え方に問題がないから大丈夫」と思っていても、気づかないうちに進行しているケースが少なくありません。糖尿病と診断されている方は、定期的な眼科検診を受けることがとても大切です。
糖尿病の合併症として起こる、網膜の血管障害
糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症のひとつで、日本における失明原因の上位を占める重篤な疾患です。
長期にわたり高血糖状態が続くと、網膜(目の中でカメラのフィルムにあたる部分)の細い血管が傷つき、詰まったり、もろくなったりして出血が起こります。
糖尿病網膜症の怖いところは、かなり進行するまで自覚症状がほとんど現れないことです。
見え方に問題がないまま病状が進み、気づいたときには深刻な状態になっていることも珍しくありません。だからこそ、定期的な眼科検診による早期発見と、適切なタイミングでの治療が非常に重要になります。
糖尿病による高血糖状態が続くと、眼底の血管が詰まり、網膜に酸素や栄養が届きにくくなります。この状態が長く続くと、身体はその不足を補おうとして「新生血管」と呼ばれる血管を新たに作り出します。しかし、この新生血管は非常にもろく破れやすいため、眼内で出血(硝子体出血)を起こしたり、網膜剥離を引き起こしたりして、急激な視力低下につながることがあります。
糖尿病と診断されたら、目の自覚症状がなくても、少なくとも半年に1度は眼科での検診を受けるようにしましょう。
糖尿病網膜症は進行の程度によって3つの段階に分けられます。早い段階で発見・治療をおこなうことが、視力を守るうえで非常に重要です。
| 段階 | 状態 | 特徴 |
|---|---|---|
| 単純糖尿病網膜症 (初期) |
網膜血管の壁がもろくなり、毛細血管瘤や小さな出血が生じる |
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| 増殖前糖尿病網膜症 (中期) |
血管が広範囲に閉塞し、もろい新生血管が現れ始める |
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| 増殖糖尿病網膜症 (進行期) |
新生血管が破れ硝子体出血や網膜剥離が起こる |
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※表は左右にスクロールして確認することができます。
網膜の中心部にある「黄斑」は、ものを見るうえで最も重要な部分です。糖尿病による高血糖が続くと、この黄斑がむくんだ状態(糖尿病黄斑浮腫)になることがあります。視界のぼやけ・ゆがみ・暗く見えるなどの症状が現れ、むくみが長引くと黄斑の神経が障害を受け、視力や視野に深刻な影響を及ぼすことがあります。
糖尿病網膜症の基本的な治療は、血糖コントロールです。
初期の段階であれば、食事・運動・薬による血糖管理で進行を抑えることも可能です。しかし、血糖コントロールが良好であっても進行するケースがあるため、定期的な眼科検診は欠かせません。
中期以降の状態では、レーザーによる網膜光凝固術が必要となります。
進行した場合は手術加療が必要になることもあります。
増殖前・増殖糖尿病網膜症が疑われる場合には、造影剤を使用した蛍光眼底造影検査が必要となるため、当院では次の提携医療機関へご紹介しています。
血糖コントロールが良好でも、糖尿病網膜症が進行することはあります。また、網膜症の初期は自覚症状がほとんど出ないため、眼科での定期検診でしか発見できないことも多いのです。糖尿病と診断されている方は、目の症状がなくても、少なくとも半年に1度は眼底検査を受けられることをおすすめします。
糖尿病と診断された時点で、一度眼科を受診されることをおすすめします。すでに網膜に変化が起きていないかを確認し、その後の定期検診の頻度を決めることが大切です。「まだ見え方に問題はない」という段階でも、早めの受診が将来の視力を守ることにつながります。